魂の骨格 「スーパーロボット超合金 グレンラガン」 雨宮 哲 × 設計 坂埜 竜 スペシャルインタビュー 第1回
2012-11-22 11:45 更新
2012年9月1日・2日、東京 原宿で開催された『TAMASHII Feature’s Vol.4 act2』でのサプライズ出品ののち商品化が発表されたスーパーロボット超合金グレンラガンが、2013年1月中旬、発売となる。
そこで今回はこのリリースを記念して、アニメ『天元突破グレンラガン』でダイナミックなアクションシーンの数々を手掛けた雨宮 哲氏、そしてスーパーロボット超合金 グレンラガンの設計担当であるコレクターズ事業部 坂埜 竜の対談が実現。ふたりのクリエイターの魂の骨格とは?
■スーパーロボット超合金グレンラガン
――2013年1月、ついに発売となるスーパーロボット超合金グレンラガンについて、まずお聞かせください。 |
坂埜:自分はアニメを観るとき、作画をすごく気にするんですよ。このシーンは「誰が描いているんだろう」とか、「すごいイイ動きしてるな」とか。それをそのまま立体化したいっていう気持ちがモチベーションにつながるんです。グレンラガンはそれらを満たした映像作品の1つでしたね。それでいつかは立体化してみたいなと思っていました。 ――雨宮さんは制作当時、いかがでしたか? 雨宮:当時、グレンラガンは基本的に“どう描いても『アリ』”だったんですよ。当時、僕は主にメカアクションの原画を描いていて、いくつかの話数ではメカ作画監督なども担当していて。その中で、わりとスタジオが自由だったので、どう描いても怒られなかったんです。自由にやれたことが、けっこうモチベーションに繋がっていました。あの頃、グレンラガンの顔に設定画にはない”唇”を描いても怒られなかったのは嬉しかったです(笑)。 坂埜:それができるのがグレンラガンの魅力ですよ。それもあってか、グレンラガンは今まで色々な解釈の立体物が商品化されていますからね。 雨宮:いろんな立体物が商品化されるのは、それぞれアレンジの方向も違っていいですよ。 坂埜:そうですね。おもしろいですけど、後発で設計するほうは結構大変です(笑)。デザインのどこをポイントとして重視するか考えつつ、既に存在している様々なグレンラガンを越えていかなきゃいけないですから。 雨宮:アニメと一緒で毎回違うのも嬉しいんですよ。個人的には正解がない感じがイイんです。いや、もうファンの方それぞれの正解を探していただければ…という感じがしますね。 坂埜:スーパーロボット超合金は、自分としてはフォルムで勝負しています。かなりやんちゃしていると思いますが……改めて立体物を目の前にして、いかがですか? 雨宮:この脛の反り返っているところのディテールが良いですよね、ふくらはぎのラインとか素晴らしい(笑)。 坂埜:ありがとうございます! 雨宮:この辺りは本編で描いていない解釈ですし、良いと思います。それと今回のグレンラガンはアニメに準拠した肌色を採用しているんですね。 坂埜:そこは設計当初からこだわりました。 雨宮:この部分は商品化されると、だいたいメカニックっぽいカラーリングが多いんです。 その理屈もわからないわけではないんですが、今石洋之監督が“肌色の顔のロボット”をやりたいと作ったのがグレンラガンだったんです。それでも商品だとやれないのかな……と思っていたんですけど、やっと劇中と同じ色の商品が(笑)。 坂埜:メタリック系で塗られている顔をみた時、自分的に何か違和感を感じていたんですよ。見栄えはいいんですけどね。 雨宮:グレンラガンを知らない人が見たら落ち着かないかもしれません。ただ、実際は肌色なんですよ。 坂埜:何か物足りないっていうか、違うなって感じていたので、特に顔は絶対に肌色でやろうと決めていました。 雨宮:立体物でもアニメカラーが許されるなんて、いい時代になりましたね(笑)。 ■クロスオーバージョイント――スーパーロボット超合金グレンラガンの特徴のひとつに“クロスオーバージョイント”があります。まずはこのシステムについて解説していただけますか? 坂埜:クロスオーバージョイントは各ロボットの武装や装備を、作品を越えて換装することができるシステムです。いわゆる共通ジョイントで、例えばスーパーロボット超合金 真マジンガーZのゴッドスクランダーをグレンラガンに装着することができます。 雨宮:すごく邪道でイイですね(笑)。ある意味、ガイナックス作品らしい遊び方です。 坂埜:その中でもゴッドスクランダーとグレンラガンの組み合わせは、違和感がないんです(笑)。 雨宮:これはどこで出たアイデアなんですか? 最初から? 坂埜:いつだったかな…? 確か設計途中だったと思うんですが……具体的な時期は、実はもう全然覚えてない(笑)。スーパーロボット超合金 真マジンガーZを2012年5月に発売したんですが、そこで採用していた肘関節、カチカチッと小気味良い関節がすごく良かったんです。そこで、グレンラガン、そしてガンバスターにも同じ構造を採用することにしました。機構を共通化することで設計期間が短縮できるっていうメリットもあったんで (笑)。 雨宮:そこで共通の関節になったんですね。 S:「マジンガーのロケットパンチと組み替えられるよね」とか、「じゃあ、ゴッドスクランダーもいける?これ、面白いじゃん!」と企画担当者との話が盛り上がり、設計として盛り込んで、正式な仕様というかたちになりました。 雨宮:これで遊びの幅がどんどん増えましたよね。 ――雨宮さん的には、グレンラガンだったら、どんなロボットとクロスオーバーしたら合うと思いますか? 雨宮:いや、グレンラガンであれば、むしろ合わないやつのほうがいいですね。違和感が見たいです。 坂埜:ちなみにどれだったら違和感出そうな感じですかね? 雨宮:えっ(笑)? 合わなさそうなの……ゴッドライディーン(超者ライディーン)とかですかね。上品な色合いだから。 ――武器だったら、いかがですか? 雨宮:世代的には勇者シリーズが好きなので、剣とか持っちゃえばいいんじゃないですかね。さすがに本編でやらなかったですけど。 坂埜:実はバスターホームラン(バット)を持たせたときに、ちょっと剣を持たせてみたいなって思ったんです。 雨宮:(グレンラガンに)バットはギリありそうな感じはするんですよね(笑)。 坂埜:持たせてもなんか違和感がない(笑)。 雨宮:でも剣は、ないなぁって(笑)。 坂埜:グレンラガンに持たせたいが為に、ガンバスターにはバスターホームランを2本つけました。 雨宮:え、2本もつくんですか? すごい! 坂埜:それとまだ未発表で、今回が初公開になるんですが、ガンバスター用のバスターシールドも設計しています。 雨宮:これはまさか…!? 坂埜:そのまさかです(笑)。実は”打倒ブラザーズマント”を裏テーマに設計しています。これももちろんグレンラガンに装備できます。 雨宮:カッコいいですね! 坂埜:企画担当者との“ブレインストーミング”というか、初期の“悪ノリ”の中に、バスターシールドをグレンラガンに装備させたいという話があったんです。じゃあ、背中のジョイントも共通化しよう、みたいな。遊ぶということをいろいろと真剣に考えて、そこに悪ノリも加わって、こうなりましたね。決して「緻密な計算を重ねに重ねたうえで…」といったガチガチな感じではないですよ(笑)。 雨宮:(笑)違和感ないですね。グレンラガンに取り付けたときのマントの位置関係なんかも素晴らしいです。 坂埜:当然ガンバスターの形状やボリュームに合わせて設計していますが、他のロボットに装着したときにも出来るだけ違和感や破綻のないようにジョイントの高さとか奥行きとか、緻密な調整が大変でした。 雨宮:万能ですね(笑)。 坂埜:純粋に、「遊べる万能マント」が欲しかったんです(笑)。こんな風にマントを前にも巻き込めるようになってます。 平面と立体、二次元と三次元の違いはあるものの、クリエイターならではのアレンジ、“面”の作り方などに話が及んだ今回の雨宮氏と坂埜氏の対談。雨宮氏は立体にも造詣が深く、坂埜氏と共に終始、スーパーロボット超合金を触りながらの対談でした。ちなみに雨宮氏は“光輪エフェクト”を持参して、グレンラガンと合わせつつポージングもしてくれました。次回はスーパーロボット超合金グレンラガンの特徴のひとつである“クロスオーバージョイント”、さらにここから派生した雨宮氏描き下ろしのクロスオーバーイラストについての話をアップします。 |
雨宮 哲(あめみや あきら) アニメーター・演出家。 |
坂埜 竜 1972年4月生まれ。1991年バンダイに入社後、栃木工場・ボーイズトイ設計を経て |
©GAINAX・中島かずき/アニプレックス・KDE-J・テレビ東京・電通