魂の骨格 「S.H.Figuarts(真骨彫製法) ウルトラマンティガ マルチタイプ」座談会
2021-03-05 04:00 更新
真骨彫製法に光の巨人現る!
ついに「S.H.Figuarts(真骨彫製法) ウルトラマンティガ マルチタイプ」の発売が決定。
そこで『ウルティマンティガ』のスーツアクターとして知られる権藤俊輔氏、ティガから始まる平成ウルトラシリーズ三部作で衣装・キャラクターメンテナンスに携わられた円谷プロの福井康之氏、今回の造形担当である永尾達矢氏のお三方による座談会を開催。
「S.H.Figuarts(真骨彫製法) ウルトラマンティガ マルチタイプ」では、当時のスーツ造形を担当していた成田 穣氏がスタチュー原型を作成。権藤氏の肉体をスキャンしたデータを反映しつつ、これまで数々のS.H.Figuartsを手掛けてきたM.I.C.の永尾氏が可動を仕込み、当時のスーツを知る福井氏が監修することで開発が行われている。まさに開発の中枢となったお三方に、『ウルトラマンティガ』について語ってもらった。
■S.H.Figuarts(真骨彫製法) ウルトラマンティガ マルチタイプ
――まずは「S.H.Figuarts(真骨彫製法) ウルトラマンティガ マルチタイプ」についてお聞かせください。
権藤:制作スタッフの皆さん、とてもよくやっていただいたと思いますよ。手を見ても「ああ、これ俺の手だなぁ」っていう感じです。やはりスーツアクターによる指先の印象で、それこそ全体の表情が出てしまいますからね。
永尾:実際に彩色されたものを見るのは、実は今日が初めてなんです。今回、パンツ部分は軟質素材なので、シルエット的には綺麗にいってるなって思います。やはりティガは素立ちが魅力のあるウルトラマンだから、素立ちで飾っても楽しめるのが一番良いところですね。可動フィギュアだからたくさん動かなきゃいけないんでしょうけど、個人的には立たせて飾りたい。あと、この軟質が商品となった時、どこまで上手く作用してくれるか、気になっています。
福井:実は私もまだ手に取って見てないなかったんですが、かっこいいですね。塗り分けのラインとかもいいですし。今回このフィギュアの監修をするうえで、“関節の可動部分を一旦ないもの”として、「全体のバランスは大丈夫なんだろうか」というところを見極めるのがとても難しかった。それはおそらく造形されている永尾さんも、そうだったと思うんですけど。
永尾:はい。やはり可動を入れる工程で、次々と段差ができてしまい、一応、ラインとしては収まっていても、立体として見た時、なんだかちぐはぐさを感じてしまう。角度がちょっとずつ変わるだけで、シルエットが変わってしまいどうしよう……みたいな。ずっとその戦いでした(笑)。
――今回、権藤さんを直接スキャンしたいとオファーがあった時、率直にどう思われましたか?
権藤:「やはり来たか(笑)」という感じでした。それこそ冗談では前々からそんな話もあったのですが……。ただ、ティガを演じてから25年経ってるわけですから、当時とは違う。そこに意味はあるのかと葛藤もありました。普段からある程度、身体の整備はしていますが、やはり当時の体形そのままを求められてしまうと……。それでも僕自身はもちろん、ファンの皆さんもこんなにティガを愛していただいてるので、その責任もある。でもまぁ聞いてみると、あくまで骨格バランスのデータを提供していただきたいとのことでしたし、じゃあ、筋肉は期待しないでねとした上で、今でもここまで求めていただけているのであればと打たれてしまい、これはもうライフワークだなと思って「分かりました」と。ただし、「納得できなかったら、ズバズバ切り捨てますよ」とは言わせてもらいました。
――実際のスキャンはいかがでしたか?
権藤:ポッドのようなものに入って 、レーザー光線のようなものが体を一巡して“バシャ!”と一瞬で撮るのかと思っていたら、予想に反してですね、ワンポーズ5分って言われて。「いやぁ、それは聞いてなかったなぁ……」と(笑)。相当きつかったですね、あれは。
永尾:静止していただいて、全身をスキャンする方式でしたからね。私も開発する上で細かい造形、バランスを把握しないといけないので、スキャン時にかなり写真を撮らせていただきました。
権藤:飛行ポーズや片足立ちは、さすがにかなり辛かったですね、動くとやり直しなんですよ!(泣)もうそれこそ舐め回すようにスキャンされるんですよ。「足の裏も撮らせてくれ」って言われた時はびっくりしましたね。
永尾:まぁ、とにかく動かないでくれと(笑)。大変でしょうけど我慢してくださいみたいな感じで。「申し訳ないです」という気持ちでした。
権藤:過去の撮影でもスチルタイム(プレス用などのポーズ撮影)があるんですけど、その時ですら経験したことがない長時間撮影でしたからね。
――成田 穣さんのスタチュー原型に、その苦労していただいたスキャンデータをフィードバックしつつ、永尾さんの手によって可動フィギュア化という工程でした。
永尾:成田さんの造形、このフォルムを極力壊さないように可動を入れていく作業でした。やはりクリアランスや肉厚を作る上で、ちょっと膨らませたり、だんだんフォルム・ラインが変わってきたりして。その時は権藤さんのスキャンデータと合わせてもう一回調整するみたいな。そんな感じでやってみましたね。
権藤:こういった可動フィギュアである以上、可動域の確保の限界値があるらしく「もうちょっと腹から背中にかけてを薄っぺらくしたいんだけどなぁ」とか、それこそ極限まで薄くしてもらったりしました。
福井:造形の仕上がりをまずデータ画像でチェックするんですけど、やはり実物と画像ではかなりギャップがありますね。データ上で気になった箇所が、実物を見ると問題なかったり、またその逆ということもありました。今回の監修で、一番気づかされたところですね。
権藤:首の形状は、けっこう意見させてもらいましたね。どのような首に対して、面が座るかによって、顔の見え方が変わってくるんですよね。それこそ同じ面を着けてても演者によって面の印象が違うんです。やはりウルトラマンティガは平成ウルトラマンとしてエポックメイキングですし、ティガのデザイナーである丸山 浩さんが創造された、この美しいデザイン、ウルトラマンティガ特有の“艶っぽさ”や“色気”をちゃんと醸し出すように、表現するようにと、抽象的な注文を付けてしまいました(笑)。
福井:“艶”とか“色気”って、とても難しいですよね。動きの中の一瞬を切り取った美しさみたいなもの、権藤さんも監修時に何回か仰っていて。可動フィギュアの中にどう落とし込めば表現できるのかというところは、かなり難しい注文だったと思います。立ち姿のフォルムは一番こだわったところでした。権藤さんは『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』のティガが、ご自分の中でも完成された姿と仰っていましたよね。このあたりも注意しながらの監修でした。
福井:やはりTVシリーズから歴史のあるティガですから、どの時代のティガを……みたいなお話もさせていただいて。最終的に『THE FINAL ODYSSEY』版のティガが一番の完成形として良いだろうとなりました。
永尾:途中でいろいろと迷いもありましたが、権藤さん、福井さんにも見ていただきつつ、ベストを目指しました。
権藤:最後の詰めの部分で、僕がダメ出しを繰り返したこともあり、完成までに予定よりだいぶ時間がかかったと聞いています。それこそ「本来、鍛えていくとココはこんな風に締まっていくもんだよ」とか。マニア的なこだわりを突き詰めてもらいましたね。
■平成ウルトラマンシリーズ第1作『ウルトラマンティガ』
――『ウルトラマンティガ』のデザインについてお聞かせください。
権藤:“ウルトラマンは赤とシルバーの二色”という刷り込まれたイメージがあったので、それにブルー系が加わってることにまず驚きましたよね。パッと見たインスピレーション、第一印象としては、理髪店の店先にある回転看板みたいだなと思いました(笑)。それと顔を見た瞬間、まあイラストで見たんですけど、ちょっと海洋生物のようなイメージを受けました。でもカッコいいなと思いましたね。
永尾:やっぱり昭和のよい造形と、平成の新しくなった、新しいデザインの造形が上手く着地点を見つけた素晴らしいデザインだと思います。
福井:最初に見たのはポスターのビジュアルでした。やはり印象的だったのは頭部のシルエット。それと色使いがまず目に入って。これまでにないデザインに驚きを感じました。
永尾:よく一般的に言われてる目のフォルムの美しさ、優しい感じもあり何か凜々しい感じもある。そこが素晴らしい、かっこいいなと思うところです。
権藤:日本を代表する特撮キャラクターは色々いますが、ウルトラマンは特に体のアウトラインにぴったりした、いわゆるアクターのボディラインがしっかりと浮き出るキャラクターなんです。だからこそ僕たちスーツアクターは、(ウルトラマンでは)膝や肘にサポーターすら入れられなかった。ウルトラマンにとって(スーツ部分は)「皮膚だ」と教わっていたので。やはり子供がお絵かきできるデザイン、シンプルなデザインこそが長く残っていくキャラクターですからね。現在は産みの苦しみと言いますか、前作と違ったものを毎年作り出さなくちゃいけない苦労もあるからだと思いますが、やはり付け足しのデザインになってるのが、仕方がないのかなと同情する反面、色使いの多さやライン取りと、あと全体のディテールがうるさくなってしまっている気がします。
福井:そうですね、今はフォームチェンジも含めてバリエーションも次々と登場していますし、複雑なデザインになってしまっているところもありますね。
権藤:それもあってティガ、ダイナ、ガイアと良い時にやらせていただいたなって想いが強くあります。ラッキーでしたね。僕の順番の時に、このウルトラマンが回ってきてくれたっていうのは。
――権藤さんが起用されたのはオーディションでしたよね。
権藤:フリーでアクションしてた頃、「久々にテレビシリーズでウルトラマンを制作するので、オーディション行きなよ?」とお話をいただいたんです。僕も若い時期で、特撮ヒーローを演じてみたいと思っていましたし。ただ本当は宇宙刑事がやりたかったんですけど(笑)。オーディション後、円谷プロさんや監督など含めて、周囲からは誰が見てもお前だよと言ってもらえました。ただ、その時点では中村さんとふたりで同じキャラクターを演じることに「ええっ!?」と。その時点でスリータイプチェンジっていうのは聞かされていなかったので。タイプチェンジを知って、そういうことかと。それは上手く作用したなと思います。
――スーツアクターとしての当時、苦労はありましたか?
権藤:テレビシリーズ終了後も何度もティガを演じさせていただいたんですが、本当に毎回視界では苦労しましたね。実際に怪獣と対する場合、相手の左足の爪先くらいしか見えないんです。四足歩行の怪獣はまだ視界内にいるのですが、人型、星人タイプは入れ替わってから振り返ると、もうどこにいるかすらわからない。あと面に関して言えば、やっぱり普段の生活で意識していないんですけども、もう本当に酸素って必要だなって。とにかく苦しいんですよ。実際には口の部分にカミソリ一枚入るくらいのスリットが入ってるんですけど、これでは(十分な)空気は吸い込めないので。視界はともかく、空気の吸入孔はなんとか工夫できるんじゃないかなっていつも思ってたんですけど、それは特に叶わず……。それでもティガのこのスーツに関しては、改良に改良を重ねていって、劇場版で集約された感じです。
――集約された中で、動きやすさにも向上が?
権藤:残念ながら、そればかりは変わりませんでしたけど(笑)……結局、ウルトラマンにおけるスーツの最大の特徴のひとつとして、面とウェットスーツが一体化されているんですよ。トランポリンで空中での捻りや方向転換は、まず思い切り首から捻って舵取りするんですが、それが抑制されてしまう。
福井:ウェットスーツがゴム素地なので、引っ張り戻されてしまうんですよね。それは首だけにとどまらず他の動きにも当てはまることで。引っ張り戻される力に負けないように芝居をするのは大変だったと思います。
権藤:顔を動かしても、のぞき穴がついてこないとか。飛行ポーズをとろうとしても、反作用がありますからね。
福井:詰め物をして、極力ホールドされるように調整するんですけど、なかなか思うようにいかないこともありましたね。テイクを重ねることで、体力もどんどん消耗してしまう。衣装を預かっている立場としては、衣装の不具合によってNGが出ないように細心の注意を払っていました。私はティガのTVシリーズに携わったのは49話「ウルトラの星」だけだったんですが、スーツに関しては撮影当初の問題点はおおよそ改善されていましたからそれ以外の不具合が起こらないように管理していました。その後、『ウルトラマンダイナ』の方にシフトして、その後、権藤さんとは長いスパンでご一緒させていただきました。
■ファンに向けて
――では、最後に「S.H.Figuarts(真骨彫製法) ウルトラマンティガ マルチタイプ」を手にするであろうファンの皆様へメッセージをお願いします。
権藤:「おまたせしました」という感じですね。最初聞かされた時はハァ?でしたが、まさしく真骨彫製法のティガです。これまでに無い新しい技術をいくつも取り入れ、十分に納得いただける仕上がりだと自信をもってお伝えします、驚きますよ!僕も本当に楽しかった!
福井:権藤さんが演じていたティガの特徴的なフォルムを見てもらいたいですね。
永尾:とにかく遊び倒してほしいですね。自分も商品で、自分の作ったもので遊ぶのが好きなので、早く手に取りたいな(笑)。
福井:まずはいろいろ動かして遊んで、素立ちで飾っておきたいですね。
永尾:私もひと通り遊んだら、もう素立ちでずっと飾りたいタイプです(笑)。素立ちで並べるタイプなんで。
福井:この後、ダイナ、ガイアが出たら、やはり3体並べたいですね。
権藤:(ティガに)マントは着てほしくないですけどね(笑)。
――皆様、ありがとうございました。
権藤俊輔(ウルトラマンティガ/スーツ・アクター)(ごんどう しゅんすけ)
1971年生まれ。
1996年制作テレビ番組「ウルトラマンティガ」から2001年までの間、劇場版やオリジナルビデオ作品において「ウルトラマンティガ」を演じた。
永尾達矢(M.I.C.)(ながお たつや)
2003年株式会社エムアイシー入社。
幼少の頃より玩具に興味を持ち、趣味で造形を始める。
美大では彫刻を学び、入社後は数多くのS.H.Figuarts商品に携わっている。
福井康之(円谷プロダクション LSSチームマネージャー)(ふくい やすゆき)
1968年生まれ。
『ウルトラマンネオス』パイロット版に造形・キャラクターメンテナンスとして参加。
以降多くの円谷プロ作品に携わる。
現在円谷プロダクションの造形部門であるLSSチームの代表。
※3月5日(金)15:30:文中の誤字を修正しました。
S.H.Figuarts(真骨彫製法)
ウルトラマンティガ マルチタイプ
発売日:2021年7月予定
メーカー希望小売価格:¥6,600円(税10%込)
商品詳細ページはこちら
スクリーンの中で活躍するヒーローたち。力強いアクション、その魂の躍動を約14cmの中で再現するのが、S.H.Figuartsの新たな造形技術「真骨彫製法」だ。 「真骨彫製法」とは、表面的でなく骨格から造形を行い、ヒーロー本来の「存在感」とフィギュアとしての「自然な可動」の両立を追求した新製法である。 |
©円谷プロ
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