魂の骨格 S.H.Figuarts ウルトラ6兄弟勢ぞろい記念円谷プロ LSS品田冬樹氏&潤淵隆文氏インタビュー

――S.H.Figuartsウルトラマンエースの監修をご担当いただきましたが、実際のウルトラマンエースの造形にはどのような印象をお持ちですか?

品田:ジャックとタロウがウルトラマンとセブンのアレンジだったことを考えると、エースとレオは完全新規にデザインされた「新しいウルトラマン」だったんですよ。そういう意味ではレオと並んで野心的な造形だと思います。成田亨さんがウルトラマンをデザインする時に採り入れたアルカイックスマイルは下唇だけで表現されていましたが、エースは上唇もそうなっているのが特徴ですね。微笑んでいるようにも見える神秘的なバランスのウルトラマンに対してエースは明確に微笑んでいます。それに気付いた時は感激しましたね。思えば、あれが造形というものに興味を持ったきっかけかもしれません。また男女合体ということでデザインにも女性的な優しさを感じました。福耳のような耳のデザインがそうですね。また「とさか」に穴があいているのも宗教的なイメージで好きでした。



――野心的とおっしゃったエースとレオの頭は、幼少時に描くのが難しかった記憶があります。

品田:たしかに難しいですよね。ウルトラマンのデザインの凄いところは、実にシンプルなのでどんな小さな子供でも描けることだと思います。ところがエースは小学生だけでなく大人でも難しい(笑)。また目の上にあるバンダナ状の部分も複雑で、よく見ると上と下では飛び出方が違っているんですよ。バンダナ中央の凹みも前から後ろに行く途中で凹み方が変わっていて、ここは今回のS.H.Figuartsでも僕と先輩である監修担当社員の船井が強くこだわった部分です。


――ウルトラマンはA・B・Cタイプの分類が有名ですが、エースのマスクも何パターンか存在したのでしょうか?

品田:基本的には1種類です。でも最初の2ピースタイプのスーツ時の顔がいちばん綺麗に磨かれていますね。最初だけあって、エッジもすごく綺麗に立っていますし、フォルムもきっちりしている。それが1ピースタイプになると磨きが少し甘いんですよ。顔だけなら最初に作られたスーツが一番だと思います。ただマスク形状自体は2ピース版も1ピース版も大きな違いはないんですよ。ですから多くの人が思うエースの顔って最初の2ピース版のイメージが大きいと思うんです。

澗淵:現存しているエースのマスクも、ややディティールがゆるい感じになっているんですよね。最近、オリジナルに近いエースのマスクを見ましたが、やはりエッジの切れ方がすごくかっこいいんです。改めてエースのかっこよさを再認識しましたね。今回のS.H.Figuartsも、エッジの立ち方などオリジナルに近い感じが出ているように感じます。参考写真をいろいろ見ながら、当時熱心に見ていたファンが抱くイメージを目指していると思います。

品田:あとエースといえば後半になると格闘戦が増え、スーツの赤が赤茶色っぽく変色してゆくのが定番ですね。これは格闘戦が多かったレオも同じです。それと切断技が多かったためワイルドなイメージもあります。


――せっかくの機会ですので、品田さんからご覧になったウルトラ兄弟のデザインポイントをお聞かせください。

品田:初代ウルトラマンは古谷敏さんという身長180cmもある方が入られていることもあって、日本人離れした体型の宇宙人というイメージを上手く打ち立てたと思います。その後のセブンはウルトラマンより頭が大きくなりましたが、身体がたくましくて格闘技に秀でた印象があります。手足が長くヒョロっとしたウルトラマンに対し、セブンはファイターというイメージです。


▲S.H.Figuarts ウルトラマン
メーカー希望小売価格:5,720円(税込)
ネット・一般店頭にて発売中


▲S.H.Figuarts ウルトラセブン
メーカー希望小売価格:6,050円(税込)
ネット・一般店頭にて発売中


▲S.H.Figuarts ウルトラマンタロウ
メーカー希望小売価格:6,050円(税込)
ネット・一般店頭にて発売中


ウルトラマンジャック、新マンは、模様が二重になった以外にも色々な部分が初代とは違っていて、「最初のウルトラマンと違う」なんて思ったんですよ。でも見慣れてくるとウルトラマンとは違う魅力を感じるようになりました。今のところ、スーツは8種類が確認されているようです。
タロウはウルトラの父と母の息子というサラブレッド感がありますよね。初代ウルトラマンに近いくらい手足も長くてかっこいいし、どこか優等生的なイメージを感じます。カラータイマーの位置がスーツによって半個上になったり下になったりしている。そういう違いがありますね。


――このシリーズで商品化を希望するキャラクターはありますか?

品田:せっかくウルトラ6兄弟が揃ったので、全員にブラザーズマントを着せたいですね。

澗淵:そうですね、ブラザーズマントは欲しいです。あと昭和の怪獣はこれまで多くが商品化されていますが、現役怪獣たちも出していただきたいです。そうなるとスタッフも喜ぶと思います。たとえばギャラクトロンとか。

品田:僕はアーリーベリアルですね。自分のデザインということもありますけど。

 

――今回のウルトラマンエースの造形ポイントをお聞かせください。

澗淵:毎日、オリジナルから複製をとったマスクを目にしている立場からしても、まったく違いが見られない。写真などの資料だけでここまで仕上げるのはすごいことだと思います。

▲3Dデータに対する社内外の設計スタッフの修正指示
頭部のバランスや目の形、首の長さに対するチェックが入っている。
胴体を中心に胸や腕、腹、腰、足の付け根など各所においても細かく調整を行い、エースらしいプロポーションへの追求を行っている。

品田:エースは胸からお腹にかけてどっしりとしていて、足が短いという独特の体型をしているんですよ。そんなスタイルをカッコ悪く見えない程度に再現するのは難しく、原型師さんもさぞかし苦労されたと思います。

澗淵:やはりあの体型でインプットされていますからね。あまり足が長くなるとエースっぽくないですからね。

品田:あと腰からお尻にかけての反りがイイ感じになっているんですよ。腰からお尻を追っている可動部の分割にもセンスを感じました。


▲試作品に対する修正
胴体を中心に修正点が集中している。ウルトラマンエース独特のプロポーションを再現するために、映像や写真資料を元に細部まで微調整を行い、本物そっくりに近づくよう力を注いでいる。


――オリジナルのマスクが実は左右非対称で、そこも忠実に再現されていると聞きましたが。

品田:これはシリーズ第1弾の初代ウルトラマンからの商品コンセプトです。その時点ですごく良くできていましたし、監修で見せていただいた時点で何の文句もない出来になっていました。S.H.Figuartsがオリジナルに似ていると言われるのは、そういう左右非対称の部分までもちゃんと再現しているからでしょう。

澗淵:こちらもその左右非対称のイメージでインプットされていますからね。でもこれくらい良く再現されていると「我々も本腰を入れて監修しなくては!」という気持ちにさせられます。


――最後にS.H.Figuartsファンに向けてメッセージをお願いします。

品田:このエースが出ることで、ようやくウルトラ6兄弟が揃います。ぜひお買い求めいただけると嬉しいですね。ニュージェネレーションシリーズでも新しい商品続々が出ますのでよろしくお願いいたします。

澗淵:僕はアニメの『ULTRAMAN』の商品も監修しています。映像作品の第2期も決まりましたので、ゆくゆくは『ULTRAMAN』版6兄弟も商品化して、実写とアニメ双方の6兄弟が並び立つところが見たいです。そのためにも今回のエースが売れてくれることが大事ですので、よろしくお願いいたします。


▲上段左から
S.H.Figuarts ウルトラセブン メーカー希望小売価格:6,050円(税込)発売中
S.H.Figuarts ゾフィー    メーカー希望小売価格:6,050円(税込) 発売中
S.H.Figuartsウルトラマン  メーカー希望小売価格:5,720円(税込) 発売中
下段左から
S.H.Figuarts ウルトラマンエース  メーカー希望小売価格:6,050円(税込)7月発売予定
S.H.Figuarts ウルトラマンタロウ  メーカー希望小売価格:6,050円(税込) 発売中
S.H.Figuarts ウルトラマンジャック メーカー希望小売価格:6,050円(税込) 発売中




【プロフィール】

 


品田冬樹(しなだ・ふゆき)

品田冬樹(しなだ・ふゆき)
円谷プロダクション 製作本部 製作部 LSSチーム チーフクリエイター
1959年12月16日生まれ。群馬県出身。雑誌編集者を経て1982年にレインボー造型企画に入社して『宇宙刑事シャリバン』、『科学戦隊ダイナマン』のキャラクター造型を担当。後に退社し1989年にビルドアップを設立。1994年にはヴィ・ショップを立ち上げ『ガメラ2レギオン襲来』『超星神グランセイザー』などに参加。2009年に円谷プロに入社し現在に至る。

 


澗淵隆文(たにぶち・たかふみ)

澗淵隆文(たにぶち・たかふみ)
円谷プロダクション 製作本部 製作部 プロジェクトマネージャー
1964年12月2日生まれ。香川県出身。レインボー造型企画に入社し、『超獣戦隊ライブマン』のガードノイド・ガッシュ、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』の守護獣ティラノザウルス、ドラゴンシーザーなどの造型を担当。その後独立してボンクラフトを設立。『電光超人グリッドマン』のグリッドマンなどを手がけた。


ブランド別商品一覧 「可動によるキャラクター表現の追求」をテーマに、「造形」「可動」「彩色」とあら ゆるフィギュアの技術を凝縮した手の平サイズのスタンダードフィギュアシリーズです。

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