魂の骨格 【後編】浅井真紀×安藤賢司×大山 竜×坂本洋一&KOMA 「SUPERIOR IMAGINATIVE COLOSSEUM」決着記念座談会
2019-05-21 16:00 更新
――今回の対戦相手が決まったとき、正直どう思われましたか?
坂本:いやホントに、著名な方々と名を連ねることになったなと。仮面ライダーもS.I.C.も好きですし、好きな作家陣だしで、その中にいられることがすごく嬉しかったです。
KOMA:僕はまず「これは大変なことになったぞ」って思いました(笑)。『ガンダム』の仕事ばかりしていた畑違いの人間なので、仮面ライダーの企画に携われるなんて微塵も思ってなかったんですよ。だから嬉しさ半分、重圧も凄くて「本当に僕でいいんですか?」って何度も聞き直しましたし、一時は「何とか逃げられないかな?」と考えたこともありました(笑)。
坂本:嬉しさよりも、恐怖が優ったんだ(笑)。
浅井:先程のKOMAさんじゃないですけど、最初は正直「場違いだ」と思いましたし、竹谷さんや安藤さん、そして五島さんや藤岡(ユキオ)さんたちが積み上げて来たS.I.C.は、そんな気楽に入って良い場所ではないという想いが強かったんですよね。それにスケジュール的にもちょっと厳しかったんですけど、ひとまず「前向きには考えます」とだけ答えて、企画書だけ頂いて帰ったんです。でも翌朝それを見直して、「コロセウム」という対決企画だったことに初めて気付いて。いやこれはキツい! 無理無理無理! ってなったんですけど、別に請けますとも言ってないし、まだ断れるだろうと思っていて。ところが数日後、BANDAI SPIRITSの岡本さんから「進捗いかがでしょう?」ってメールが来て……観念しました(笑)。
大山:最初に企画を聞かされたときは、とにかくスゴイなという感想しかなかったですね。メンバーも豪華だし、なぜか安藤さんまでいらっしゃるし(笑)。
浅井:やっぱりおかしいですよね? この企画で安藤さんが面子に入ってるのって(笑)。
安藤:……何かすみません(笑)。
――安藤さんは、お三方が参加すると聞いてどうでしたか?
安藤:最初は参加者だけ伺っていて、誰が何をやるかは知らなかったんです。で、その後デザインを見たんですけど、フォーゼは僕の考えるフォーゼとは全然違うし、面白いと思いましたね。浅井さんの龍騎は、自分が龍騎を作ったときの色んな思い出が蘇りました。浅井さんと同じで、僕も全然『龍騎』の正体が掴めないままやっていて、でも当時は締め切りまでひと月くらいしかなくて、悩んだ挙句ギミックに逃げるという方法を思い付いて……これで勘弁して下さいって感じで出したので、龍騎のデザイン自体はけっこう映像そのままなんですよね。だから浅井さんの龍騎を見たときは、「羨ましいな」って(笑)。
クウガは僕も作りましたけど、その前に当然竹谷さんがやられたものがあって。僕のときは「『ディケイド』版のクウガ」ということだったんですけど、竹谷さんのデザインが強過ぎて、何をしようがあれ以上カッコいいものが作れなかったんです。僕自身『クウガ』が大好きなんですけど、好きなキャラにはアレンジ入れたくない! という気持ちも強くて(笑)。だから「リント文字は絶対入れよう」とだけ思いながら作ったんですけど、大山さんのを見た時に、この手があったか!! って思いました(笑)。ディテールの出し方とかもそうですけど、僕が逃げたクウガをちゃんと攻めていて、これはすごいなと。
――安藤さん以外にも、他の方の作品から1本取られたと感じた部分があったらお聞きしたいのですが。
大山:フォーゼって、ラフの段階ではもっとメカっぽいデザインもあったじゃないですか? でも実際に完成したものを見たら、フォーゼ以外だとやりにくいことに挑戦していた。フォーゼだからこそ、この方向性で行くという思いが伝わって来て、すごいなと思いました。
坂本:フォーゼでしかできないことをやろうというのは、最初からありましたね。だから単純にメカっぽくするのではなく、「宇宙服+パワードスーツ」みたいに切り分ける方向へ全振りしようと考えました。当初は手もマニピュレーターという発想で、弦太朗の手は腕の中に納まるようデザインしていて、このロボットっぽい手はその名残なんです。ネットでも某ロボットの指みたいって言われましたけど(笑)。
浅井:僕は安藤さんのゴーストです。最初に写真を拝見したときは、顔の下に隠されたガイコツとかボロボロのコートで、より怖い方向へ振っているんだと思っていたんです。でも実際に現物を見ると、脚部のスモークグレイパーツが思っていた以上にクリアーで、幽霊としての儚さがあると感じましたね。上半身はカッコ良さや怖さを演出しているんですけど、引いて全体を見ると儚さが足される。こんなにもバリエーションが広がる要素が、1つのセットの中に組み込めるという驚きがあったんです。ゴーストの魅力や面白さに改めて気付けました。ただ情報量を増やせばいいというものではないところが、S.I.C.の難しさだと思うんですよね。拾い方に好みの差はあれど、どれだけちゃんと拾えるかがS.I.C.の魅力で、このゴーストはそれがものすごく細かく詰まっている気がしました。
安藤:そんなに褒められると、何も言えない。
浅井:自分の作品を語られるのって、恥ずかしいですよね(笑)。
安藤:いやいや、もっと言って下さい(笑)。
――最後に、製品化にあたって、ここだけは譲れないので頑張って下さいというポイントを、BANDAI SPIRITSさんへ向けてアピールして下さい。
坂本:顔のクラッシャー部分がもう少し見えるように、色の加減をお願いします(笑)。顔がクリアパーツなんですけど、その下のクラッシャーもちゃんと作っているので。
KOMA:僕は……宣伝をMETAL BUILDとは違う、ヒーロー玩具らしい明るいイメージでお願いします(笑)。
浅井:やっぱりアクションフィギュアなので、関節周りの強度などはしっかりお願いしたいというのが1つと……大きなことを言うようで申し訳ないんですけど、お値段はできるだけ頑張っていただきたいです。昨今は玩具のお値段もかなり上がってきていますが、何とかファンの皆さんの心が折れない価格設定にしてもらえたら(笑)。
大山:僕は今の状態で満足しているので、これ以上何か言うこともなくて。手元に商品が届くのを楽しみにしています。
安藤:僕は……いつも通りでお願いします(笑)。ただし、個人的には今回の4点が商品化されること自体が、すごく楽しみなんですよ。コストとか色んな面も含めてこれまで禁じ手と言われていたことが、全部に入っているので。これまで僕が何年も掛けてブレイクスルーしたのが現状だとすると、今回新しい人が入ってさらにブレイクスルーしてくれた。実はあれもできる、これもできるんだ! というのが、これで明らかになるなと(笑)。
浅井:今回、僕は頑張ってS.I.C.に寄せたつもりだったんですけど……フォーゼを見て、S.I.C.をここまで大幅に更新して良かったのか!! って気付かされましたよ(笑)。
安藤:僕も最初に見たとき、やってるなぁ、俺がやったら絶対怒られるよな、と思いましたね(笑)。
坂本洋一(さかもと・よういち)
1970年、東京都生まれ。
建築設計事務所勤務などを経てフィギュア原型の道へ入り、現在はKOMAとのコンビでMETAL BUILDシリーズなどの原型を手掛ける。株式会社ウイングに所属し、原型ユニット ケミカルアタックとして活動。
KOMA(こま)
1969年、兵庫県生まれ。
REDカンパニー(現レッド・エンタテインメント)などを経て、現在は『ガンダム』シリーズを中心にイラストレーターとして活躍中。
浅井真紀(あさい・まさき)
1973年、大阪府生まれ。
1990年にデビュー後、ガレージキット業界で名を馳せる。デザインのみならずアクションフィギュアの基礎設計まで幅広く手掛ける。
安藤賢司(あんどう・けんじ)
1963年、神奈川生まれ。
書店店員などを経て、1993年に原型師デビュー。S.I.C.にはシリーズ当初から参加し、竹谷隆之との両輪で一大サーガへと発展させた。
大山 竜(おおやま・りゅう)
1977年、大阪生まれ。
美術系の短大で絵画を学んでいたが、中退。その後趣味だった造形の道に入り、現在はクリーチャーデザイナーとしても活躍している。
造形界のトップクリエイター竹谷隆之氏、安藤賢司氏らによる、「デザインの美しさ」「造形技術の巧みさ」といった、芸術美に焦点を当てたフィギュアシリーズ。「ニューマテリアル」「ハイクオリティ」「プレイバリュー」「オリジナリティー」の4コンセプトを共存させ、キャラクターフィギュアの新しい概念を構築した。 |
©石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
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