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誰もが望んでいた
“本物そっくり” で “自由に動く” ウルトラヒーローを!! 文・五十嵐浩司氏(アニメーション研究家)

2016年のスタートから3年目を迎える、S.H.Figuarts『ウルトラマン』シリーズ。
これまで様々なコンセプトの可動フィギュアが作られているが、S.H.Figuartsの『ウルトラマン』シリーズは“本物そっくり”で“自由に動く”ことをテーマにしている。
一見、シンプルなテーマだが、両方を満たすことはきわめて難易度が高いのも事実。しかし、S.H.Figuarts『ウルトラマン』シリーズは、そんなユーザーにとっての“アタリマエ”を満たすため日夜挑戦を続けているのだ。

CASE:1 平成ウルトラヒーローの場合-ウルトラマンジード プリミティブ-

 最新テレビシリーズ『ウルトラマンジード』に登場するウルトラマンジード プリミティブ。
そのディテールは、円谷プロダクション造形部門LSSの協力を得て造形されている。LSSは、映像に登場する“実物のスーツ”を直接作っている。つまり、本物が何かを最も熟知しているスタッフ集団でもあるのだ。
 この「S.H.Figuarts ウルトラマンジード プリミティブ」もLSSの方々への綿密な取材を行い、実物のスーツを元に造形を行っている。いわば、S.H.Figuartsのディテールはかぎりなく実物に近いものとなっているわけだ。しかし、ただ単に実物と同じ形にすれば良いというわけではない。全高約150mmに落とし込んだ“見栄え”が本物に見えるよう、何度も修正が重ねられている。
 では、その修正例をご覧いただこう。

◎修正その1

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これはウルトラマンジード プリミティブのスーツを設計用3Dデータに置き換えたもの。
バンダイ社内外スタッフによって、修正が加えられている。スーツそのままの造形であっても、全高約150mmに縮小した時点でメリハリが足りない箇所が出て来る。この段階はそこに修正ポイントが置かれている。

◎修正その2

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修正を加えたデータに可動用の関節を加えたもの。大規模な修正は無いが、顔と首周辺に指示が入っている。
顔は特に留意すべき箇所であるからだ。

◎修正その3

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3Dデータを出力した試作品に対する修正。立体となることで、さらなる修正が加えられる。修正前と後とでは、頭部と胸のボリュームアップが顕著であり、ここに“見栄え”へのこだわりの到達点がある。
「S.H.Figuarts ウルトラマンジード プリミティブ」の目指す “見栄え”とは、頭を小さく、脚を長くといったモデル的プロポーションの追求とは別の次元にある。あくまでも“本物そっくり”に見えることが重要なのだ。

CASE:2 昭和ウルトラヒーローの場合―ウルトラマンジャック―

 昭和の作品に登場したウルトラヒーローは、リアルタイムの撮影に使用したスーツが完全な形で存在しない場合が多い。そのため、当時の撮影現場で撮影されたスチール、および映像を解析・検証・そして円谷プロの監修を経て造形を行うことになる。
 また、当時の造形の特徴として、マスクが必ずしもシンメトリーとなっていない場合がある。S.H.Figuartsの昭和ウルトラヒーローは、そこも造形上の特徴として捉えて再現を行っている。

◎修正その1

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3Dデータに対する設計スタッフの修正。頭部、胴体のボリュームを増やすように指示が行われた。
一方、ももとスネはさらに細く短くするように指定がある。あえて胴を長く、足を短く……そこにジャックのプロポーション追求ポイントが存在するのだ。

◎修正その2

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試作品に対する修正。目の位置、耳と口の大きさ、顎の形状など、顔へ修正点が集中している。
初代ウルトラマンやゾフィーとは違う、“ジャック”独特の顔を再現するために、力点が置かれている。

CASE:3 昭和ウルトラ怪獣の場合―ツインテール、グドン―

 昭和の「S.H.Figuarts ウルトラ怪獣シリーズ」には、先の2例には無い造形上の大きな特徴がある。それは手で原型が作られていることだ。怪獣はヒーロー以上にディテールにデリケートさが要求される。そのため、フィギュア化もあえてデジタル化を避けて、伝統の手原型を使用しているのだ。
 怪獣の原型は、まず無可動で作られる。そして関節ごとに分割して、S.H.Figuartsとして再構成される。同時にスチールや映像をもとに解析・検証を行い、造形がブラッシュアップされていく。さらに、各関節は映像のスーツ以上に動かせるように留意されている。
ウルトラヒーローとウルトラ怪獣、カテゴリーやアプローチは異なっても、“本物そっくり”で“自由に動く”というテーマに変わりはないのだ。

◎造形

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造形中のショット。原型師・細川満彦氏の下で働く原型師の指が、グドンを作り出していく。
関節可動用のパーツも原型職人が旋盤加工で一つ一つ作り出している。

◎原型

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ツインテールとグドンの手原型。この時点では油土というワックス系粘土が使われている。
シンメトリーは無視して、あくまで見た目の形状を重視しているという点では、昭和ウルトラヒーローと同様である。

◎円谷プロ監修

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円谷プロによる造形監修。スチールや映像を検証材料に用いて、綿密なチェックが入っている。
この監修を経て、造形の完成度が固められていくのだ。

◎可動入り原型

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造形監修後、素材をPU(ポリウレタン)キャストに置き換えた原型に可動部分を入れていく。

◎完成

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こだわりの造形と関節可動により、スチール写真とそっくりのツインテールが完成!!
伝統と最新技術が融和した、S.H.Figuartsブランドだからこそ作り得たウルトラ怪獣である!!

東莞市観考造玩具有限公司 原型開発総責任者 細川満彦氏コメント 原型製作に関して3D CADを用いず、造形製作しているのは理由があります。
「ダサかっこいいたるみ」や「ヨレ感」を出すためには、粘土造形による形状の追い込みと把握が必要であり、それは画面上のデータでは確認しきれない部分が多くあることが一つ。
それと関節可動の機構には、原型を用いて作業したほうが、より明確で確実な答えが出るためです。また可動部分に関しては、偶発的に予想以上の結果が出ることがあり、実際に原型を手にしながら作業をしています。
各原型師の手作業で造られる入魂の原型には、職人としての技術と経験が詰まっています。
ウルトラ怪獣に関して言えば、僕の年齢(47歳)でも若輩に入るくらい、長い年月愛され続けてきたキャラクターです。形状がスーツ基準であることは当然として、可動による分割ラインが形状を壊すのはNGという、敷居の高いものです。
しかし、S.H.Figuartsのウルトラ怪獣は、ウルトラマンに対して引けを取らないポージングを求められます。
この相反する点を整合することがS.H.Figuarts ウルトラ怪獣の基本的コンセプトとして製作しています。
そしてこのコンセプトを継続するだけでは、購入者に飽きが来てしまうと考えており、各商品ごとに一ネタ二ネタ仕込むことにしています。
ツインテールの可動ギミックや足の裏ディテール、グドンとの組み合わせ遊びがそれです。
購入者目線に立ち、シリーズの流れを考えながら飽きの来ない商品になるように商品開発を心がけています。

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カワハラフォトボックス 川原裕治氏 本物と見間違えるほどの写真を撮りたいと熱い担当者様からのご要望に答える形でイメージカットの撮影はスタートいたしました。
まず一番気をつけなくてはいけないのが、偉大な先輩方のスチール、場面写に恥じぬ写真を撮らなくてはいけない。これはかなりの重圧で、少ない資料から当時の情報を読み取り撮影に反映していくのはやはり難しいです。
ですがそれに応えてくれるのがS.H.Figuarts ウルトラマンシリーズのウルトラマンや怪獣たちで、資料に合わせてライティングと小道具を用意し、ポージングを付けて撮影セットにセッティングすると、まるで当時の撮影スタジオに迷い込んでしまったと錯覚してしまうほど、このシリーズは精巧な造形です!
手軽に遊べるリアルで小さなS.H.Figuarts ウルトラマンシリーズ!皆さんも是非手に取って撮影をしてみてはいかがだろうか!あなたもきっと当時に迷い込んでしまうことだろう!

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©円谷プロ
©円谷プロ ©ウルトラマンジード製作委員会・テレビ東京